Schärf-Fixは、1948年にドイツのミュンヘンに住む、ユーリッヒ・ボン・シュリーベン氏によって発明されました。彼はそこで小さな金物屋と、併設の工房を営んでいました。
製本業を営む友人を助けるため、彼は初代Schärf-Fixを作り上げたのです。その友人は戦争によってほとんどのものを失い、生業としていた製本業をほそぼそと続けていました。
製本には革漉きが必須ですが、当時は手作業で非常に労力が要る仕事でした。しかし、新しい発明品のおかげで、その苦しい作業は格段に楽になりました。
”Schärf-Fix”、言い換えると“早く漉く”ということばが示す通り、大変な革漉きの作業があっという間に終わるのです。Schärf-Fixは発明当時も今とほとんど変わらぬ形をしていますが、今よりずっとシンプルで単純な構造でした。
手動革漉き機の需要は、当時も今もそれほど多いものではなく、お金を生み出すたぐいの製品ではありません。シュリーベン氏もそのことをよくわかっていたそうです。しかしシュリーベン氏は、周りに暮らす人々の生活に役立てるよう、その卓越した技工と知識を惜しみなく製品作りに注ぎました。革漉き機だけでなく、ほかにも様々な小さな工具を発明したり、加工したりしていたそうです。それらの発明品は、 靴屋さんなどの専門店や、地元の人々に喜ばれ大切に使われたそうです。
初代Schärf-Fixは、人々の手助けになりたいという、彼の信念の結晶です。
1955年、75年、と合計2回の改良が加えられ、より使いやすく機能的な製品になりました。
1988年に、シュリーベン氏の息子であるフレデリック氏が経営する、スウェーデンのテクノメク社に製造と販売が移譲されました。フレデリック氏は1970年にスェーデンに移住していたので、これよりSchärf-Fixはスウェーデン製となったのです。
右の広告は、およそ25年前の、改良モデル発売当時のものです。白黒写真ですが、本体色はグリーンです。現在とほとんど変わらぬ姿です。
1922年に、フレデリック氏のもとで更に改良され、Schärf-Fix2000モデルとなりました。2012年に、初のカラーチェンジを試み、限定モデルであるブラック色を制作しました。職人さん達による、完全手作業による製造のため、一日に生産出来る台数は非常に限られています。
工場長であるフレデリック氏は、日々精力的に製造に取り組んでいらっしゃいましたが、2013年に高齢のため引退する決意をしたのです。2013年にはドイツのシュミット社にすべての業務が移りました。フレデリック氏とシュリーベン氏によって製造された旧Schärf-Fixモデルは、現在でも世界中の人々に愛されています。
貴重な資料や写真を、当店にご提供いただきましたテクノメク社のフレデリック氏に、心より御礼申し上げます。With sincere gratitude, ZIT TOOLS.